シリコンウエハーが不足している?半導体不足が影響する業界とは?
半導体不足が深刻な問題と化しています。
日本では、自動車業界が最も大きな痛手を負っており、半導体不足によって生産ラインを縮小せざるを得ない状況となっています。
また、自動車業界以外でも半導体を必要とする業界では、製品を作ることができなくなる可能性も出ています。
そこで、半導体不足による影響を確認してみましょう。
シリコンウエアーが世界的に不足している原因
まず、半導体が不足している事と、シリコンウエハーが不足していることの関係性について確認してみましょう。
半導体不足は世界的に起こっており、いくつかの要因が重なり、現在の半導体不足を引き起こしています。一方で、半導体不足の要因にシリコンウエハーが不足していることも挙げることができます。
先ずは、不足となった原因を順番に確認していきましょう。
■新型コロナウイルスによる巣ごもり需要
新型コロナウイルス感染拡大を受けて、テレワークが推奨され自宅でのパソコン利用が増加。
子どもたちも学校が休校になったり、外出を控えるように言われたりしたことで、自宅でのゲーム利用が増加しました。
この現象は日本だけでなく、世界中で起きています。
これによって、パソコンやゲーム機の需要が一気に加速。
先ずは、身近な半導体製品の利用増加によって、半導体不足が起きる結果となりました。
■新型コロナウイルスによる工場の閉鎖
半導体を利用する製品の需要が高まったのであれば、生産体制を強化すればよいことですが、今回は逆転現象が起きています。
生産ラインを強化するどころか、新型コロナウイルス拡大防止の観点から、生産ラインが閉鎖される事態に陥ってしまいます。
これによって、需要と供給のバランスが一気に崩れ始めました。
■アメリカによる中国企業への経済制裁
このように、供給が追い付かない状況にあるにも関わらず、2020年12月にアメリカ政府が一部の中国企業との取引を中止する命令を出します。
この経済制裁によって、中国以外の台湾や韓国企業への注文が集中することとなり、半導体不足に拍車をかける結果となっています。
■アメリカ・台湾の半導体企業が機能停止
2021年2月には、アメリカテキサス州の大寒波によって、同州の半導体工場が閉鎖されています。
さらには、台湾における深刻な水不足により、大量に水を必要とする半導体の生産に大きな影響を及ぼしています。
■シリコンウエハーも生産が追いついていない
半導体自体の製造が減少して需要に追いついていないことが、半導体不足の最も大きな原因となっています。
それに加えて、半導体に必要不可欠なシリコンウエハーも、生産が負いついいていない現状にあります。
理由としては、高性能なシリコンウエハーを作れる企業が少ないことです。
現在、シリコンウエハー市場では、日本の2企業で55%ものシェアを誇っています。
では、「他の企業も市場に参加すればよいのでは?」と考えてしまいますが、そうはいきません。
■高性能なシリコンウエハーはカンタンに作れない
高性能なシリコンウエハーの品質はとても厳しく、直径300mの平面上で高低差が0.1mmに収まらなくてはなりません。
甲子園球場で例えると、球場にピンポン玉1つ落ちているだけで、不良品となります。
現状では、この精度のシリコンウエハーを提供できているのは、信越化学工業とSUMCO(サムコ)の日本企業2社だけです。
2社合わせても世界シェア6割弱なので、シリコンウエハーの生産が追い付かないのは明白でしょう。
半導体不足が影響する業界
それでは、半導体が不足することで影響のある業界を確認してみましょう。
今や半導体を使っていない製品を探す方が難しいでしょう。
半導体不足によって最も影響を受けているのは、自動車業界です。
現在では新車を注文しても、半年待ちは当たりまえ。
車種によっては、納車日が分からない車もある程です。
■長引けばエアコンの生産にも影響がでる
半導体不足が長引けば、2022年の夏に販売するエアコンの生産にも、影響が出ると言われています。
在庫があると言っても、もしも来年の夏が猛暑だった場合。
エアコンの需要が高まり在庫だけでは、対応できない可能性が高いです。
■電子機器全体が不足する可能性も高い
ゲーム機やパソコン・タブレットなど、電子機器全般が不足する可能性が高くなっています。
既に、iPhoneにも影響が及ぶことが示唆され始めています。
■半導体を利用する全ての業界にダメージが及ぶ
これらの影響を考えていくと、半導体を利用する全ての業界にダメージが及ぶと考えられます。
さらに、その機器を使用する電車や飛行機など、公共交通機関への影響も避けられないケースが現れるかも知れません。
半導体不足はいつ頃まで続くと予想される?
現在の半導体不足が解消するのは、いつになるのか。現段階では、正確な予測ができていないのが現実です。
コロナウイルス感染が収まりつつある中で、半導体の生産は増産体制にあるようです。
一方で、シリコンウエハーは先にもお伝えした通り、精度の高い製品を作れる企業が限られていることから、2023年でも1割~2割不足すると予想されています。
■最低でも今後1年は半導体不足が継続する
半導体不足の収束時期は、誰も読み切れていません。
解消する手立ては、世界的に行われています。既に半導体の主流メーカーが大幅な出資を行い、増産体制に入っています。
ですが、現時点で半導体の到着を待つ製品が多くあるので、これらの製品の供給を済ませて日常化するには、最低でも1年はかかると言われています。
まとめ
新型コロナウイルスの影響と、いくつもの要因が偶然にも重なって起きている半導体不足です。
どの業界でも、不足解消に向けて努力していますが、今回のダメージは大きくカンタンに回復することは難しい状況にあります。
今はまだ、日常生活への大きな影響は出ていません。
ですが、長期化すれば信号トラブルや車両トラブルなど、大きな事故につながる可能性も捨てきれません。
半導体は日常生活と切っても切れない関係にあることが、今回の事態でよく分かりましたね。早急な、半導体不足解消を願うばかりです。